2011年9月23日更新

Zornの補題・極大原理

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定義

Rを集合x上の関係とする.

定義2

(x, ≦)を順序集合とする.

定理1

次の命題は(ZF上)同値

  1. 空でない順序集合xが「xの鎖には上界が存在する」を満たすならば,xの極大元が存在する.(Zornの補題)
  2. 集合x上の推移的関係Rに対し,Rによって全順序付けされる極大部分集合が存在する.
  3. 任意の集合xを⊂で順序集合とみなしたとき,xは極大鎖を持つ.
  4. 任意の集合xを⊂で順序集合とみなしたとき,xが 「鎖y⊂xに対し,∀a∈y(a⊂b)となるような元b∈xが存在する」を満たすならば,xの極大元が存在する.
  5. 有限性をもつ非空集合xは(⊂に関する)極大元をもつ.(Tukeyの補題)
  6. 任意の前順序集合(x, ≦)は極大鎖を持つ.
  7. 任意の順序集合(x, ≦)は極大鎖を持つ.(Hausdorff's Maximal chain Condition)
  8. 任意の順序集合(x, ≦)の任意の鎖は,xのある極大鎖に含まれる.
  9. 任意の木(T, ≦)は極大鎖を持つ.
  10. 任意の前順序集合(x, ≦)は極大反鎖を持つ.
  11. 任意の順序集合(x, ≦)は極大反鎖を持つ.(Kurepa's Maximal Antichain Condition)

証明

(1 ⇒ 2) A := { y⊂x | (y, R)は全順序 } と定め,⊂でAに順序を入れる.この(A, ⊂)はZornの補題の仮定を満たす.

C⊂Aを鎖とし,z:=∪_{y∈C}yと置く.まず(z, R)が全順序集合である事を示す.

(i)反射律
任意のa∈zを取る.zの定義よりあるy∈Cが有ってa∈y.よってyの全順序性よりaRa.

(ii)反対称律
a, b∈zに対しaRbかつbRaであるとする.zの定義とCが鎖であることからあるy∈Cが有ってa, b∈y.よってyの全順序性よりa=b.

(iii)推移律
Rが推移的関係であることから明らか.

(iv)比較可能性
a, b∈zを取る.zの定義とCが鎖であることからあるy∈Cが有ってa, b∈y.よってyの全順序性からaとbは比較可能.

以上より(z, R)は全順序である.故にz∈A.従って明らかにzはCの上界である.

よってZornの補題より極大元が存在するが,これが明らかに求めていたものである.

(2 ⇒ 3) ⊂は推移的だから,仮定2. より⊂によって全順序付けされる極大部分集合が存在するが,これは明らかに(x, ⊂)の極大鎖である.

(3 ⇒ 4) 仮定3. より極大鎖y⊂xが存在する.この鎖yに4. の仮定を適用すると∀a∈y(a⊂b)となる元b∈xが取れる.このbがxの極大元である.

(4 ⇒ 5) xが有限性を持つとする.順序集合(x, ⊂)が4. の仮定を満たすことを示せばよい.

y⊂xを鎖とする. b:=∪_{a∈y}aと置けば,b∈xである.

c⊂bを任意の有限部分集合とする.bの定義とcが有限集合であることから c⊂a_1∪a_2∪…∪a_n となるa_i∈yが存在する.(y, ⊂)が全順序であるから a := max{ a_1, a_2, …, a_n } が存在してc⊂aとなることが分かる.a∈y⊂x,即ちa∈xだからxが有限性を持つ事よりc∈x.従って再びxが有限性を持つ事からb∈xである.

このb∈xは明らかに4. の仮定∀a∈y(a⊂b)を満たす.

(5 ⇒ 6) A := { y⊂x | yは鎖 } は空ではない.明らかにAは有限性を持つので,Tukeyの補題より極大元を持つ.

(6 ⇒ 7) 明らか.

(7 ⇒ 8) c⊂xを鎖とする.集合 y:={ a∈x | aはcの全ての元と比較可能 } を考える.明らかにc⊂y.(y, ≦)は順序集合だから,仮定7. より極大鎖m⊂yを持つ.c⊂mである.

a∈c\ mが存在すると仮定する.mの極大性よりm∪{a}⊂yは鎖ではない.故にa∈cと比較不可能な元b∈m⊂yが存在するが,それはyの定義に矛盾する.

故にmは鎖cを含むxの鎖である.鎖d⊂xがmを含むとする.するとc⊂m⊂dだからdの任意の元はcの元と比較可能,よってd⊂yである.即ちdはyの鎖でもある.故にmの極大性よりd=m.即ちmはxの極大鎖である.

(8 ⇒ 9) 明らか.(例えば∅⊂Tが鎖だから)

(9 ⇒ 1) Zornの補題と同値な整列可能定理を示す.Xを任意の集合としT := { f:α→A | αは順序数でfは単射 } と置く.(T, ⊂)は木である.よって極大鎖Cを持つ.すると g := ∪_{f∈C}f はある順序数からAへの単射である.Cの極大性からgは全射.故にXは整列可能である.

(5 ⇒ 10) A := { y⊂x | yは反鎖 } は空でない.明らかにAは有限性を持つので,Tukeyの補題より極大元を持つ.

(10 ⇒ 11) 明らか.

(11 ⇒ 1) Zornの補題と同値な整列可能定理を示す.その為に,整列可能定理と同値な「全順序集合は整列可能」を示す.

整列可能定理についての定理1を参照

(X, ≦)を全順序集合とする.A := { (Y, y) | Y⊂X, y∈Y }と置き,Aの順序を
(Y, y)≦(Z, z) ⇔ Y=Zかつy≦z
で定める.(y≦zはXの順序である.) 仮定11. より極大反鎖C⊂Aが存在する.Xは全順序だから,明らかに C = { (Y, f(Y)) | Y∈P(X)\{∅} }と書ける.このfはP(X)\{∅}の選択関数である.よって選択公理から整列可能定理を導くのと同様にしてXが整列可能なことが分かる.

整列可能定理とZornの補題を参照

定理2

次の命題は(ZF上)同値

  1. 空でない順序集合xが「xの鎖には上界が存在する」を満たすならば,xの極大元が存在する.(Zornの補題)
  2. 空でない順序集合xが「xの鎖には上限が存在する」を満たすならば,xの極大元が存在する.
  3. 空でない順序集合xが「xの部分整列順序集合には上界が存在する」を満たすならば,xの極大元が存在する.
  4. 空でない集合x上の推移的関係Rが 「xの部分集合でRによって全順序付けされるものには上界が存在する」を満たすならば,xの極大元が存在する.
  5. 空でない集合x上の推移的関係Rが 「xの部分集合でRによって整列順序付けされるものには上界が存在する」を満たすならば,xの極大元が存在する.

証明

(5 ⇒ 4)と(4 ⇒ 2)と(5 ⇒ 3)と(3 ⇒ 2)は明らか.

(2 ⇒ 1) Zornの補題と同値なTukeyの補題(定理1の5)を示せばよい.その為にはxが有限性を持つとき「順序集合(x, ⊂)の鎖には上限が存在する」を満たすことを示せばよい.

y⊂xを鎖とする.a := ∪_{b∈y}b と置く.定理1の 4 ⇒ 5 の証明と同様に,a∈xが分かる.

明らかにaはyの上界である.cをyの上界とする.即ち任意のb∈yに対しb⊂c.s∈aとする.aの定義よりあるb∈yが存在してs∈b.故にs∈b⊂c.即ちa⊂cである.従ってaはyの最小上界,即ち上限である.

(1 ⇒ 5) Zornの補題と同値な定理1の2.「集合x上の推移的関係Rに対し,Rによって全順序付けされる極大部分集合が存在する」 を仮定して5. を示す.

W := { y⊂x | (y, R)は整列順序集合 } と置く.W上の関係Sを
ySz ⇔ y⊂zかつz∩R^{-1}(y)⊂y
と定める.Sは推移的である.

ySz かつ zSw であるとする.即ち y⊂z⊂w, z∩R^{-1}(y)⊂y, w∩R^{-1}(z)⊂z.よって
y⊃ z∩R^{-1}(y) ⊃ (w∩R^{-1}(z))∩R^{-1}(y) = w∩R^{-1}(y)
故にySw.

仮定(定理1の2)よりSによって全順序付けされる極大部分集合N⊂Wが存在する.u := ∪_{y∈N}y とする.(u, R)は順序集合である.

任意のv(≠∅)⊂uを取る.するとあるy∈Nについてv∩y≠∅である.y∈N⊂Wだから,(y, R)は整列順序.よって a := min(v∩y) が存在する.このaはvの最小元でもある.

b∈v, b≠aとする.

(i)b∈yのとき.aRbである.

(ii)b ∉ yのとき.あるz∈Nについてb∈zとなるが,(N, S)は全順序であるからySzでなければならない.従って b ∉ R^{-1}(y) である.a∈yだから¬bRaである.a, b∈zで(z, R)が全順序であることからaRbであることが分かる.

(i)(ii)よりaはvの最小元である.

よって,uの空でない任意の部分集合は最小元を持つ事,即ち(u, R)は整列順序集合である事が分かる.故にu∈W.このuは(W, S)の極大元である.

z∈WがuSzを満たすとする.uの定義から,任意のy∈Nに対しySu,よってySz.即ちN∪{z}は(W, S)の全順序部分集合である.Nの極大性からN=N∪{z},従ってz∈N,よってzSuとなる.即ちuは極大元.

(u, R)⊂xは整列順序だったから,5. の仮定よりuの上界s∈xが存在する.

a∈xがsRaを満たすとする.勿論aはuの上界である.aRbとなるb∈uが存在する.

「全てのb∈uに対し¬aRb」と仮定する.u∪{a}はRについて整列順序.よってu∈Wの極大性からu=u∪{a}.従ってa∈u,よって¬aRaである.一方sがuの上界であることからa=sまたはaRsであり,ゆえにsRaからaRaが分かる.よって矛盾.

よってsRb.するとsがuの上界であることからb=sまたはbRsであるが,どちらにしてもaRsである.従ってsが(x, R)の極大元であることが分かった.

定理3

選択公理
⇔順序集合Xが「下の条件(*)を満たす任意のA⊂Xが上界を持つ」を満たすならば,Xは極大元を持つ.

(*) 任意の元x, y∈Aに対し { x, y }⊂A はAに上界を持つ.

証明

(⇒) Xを順序集合とする.(*)を満たすA⊂Xが上界を持つとする.C⊂Xを任意の鎖とすると鎖は(*)を満たすから,Cは上界を持つ.従ってZornの補題よりXは極大元を持つ.

(←) {X_λ}_{λ∈Λ}を非空集合の族とする.X := { f: Γ→∪_{λ∈Λ}X_λ | Γ⊂Λ, f(λ)∈X_λ }と定める.Xに⊂で順序を入れる.

A⊂Xが(*)を満たすとする.g := ∪_{f∈A}f と置く.λ∈dom(g)を取る.dom(f_1), dom(f_2)∋λとなる任意の f_1, f_2∈A を取る.条件(*)より,{ f_1, f_2 } はAに上界 h を持つ.このとき h(λ) = f_1(λ) = f_2(λ) である.即ち g(λ) は一意に定まる.故に g∈X .明らかに g はAの上界である.

よって仮定よりXは極大元を持つが,それが選択関数である.

定義

xを集合,R⊂x×xを二項関係とする.

定理4

M(n)で次の命題を表すとする.
任意の集合xとR⊂x×xに対し,下の条件n. を満たす極大なy⊂xが存在する.
このとき
Zornの補題 ⇔ M(1) ⇔ M(2) ⇔ M(3) ⇔ M(4) ⇔ M(5)

  1. y×y ⊂ R
  2. y×y ⊂ R∪R^{-1}
  3. y×y ⊂ R^c∪(R^c)^{-1}
  4. y×y ⊂ R∪R^{-1}∪I
  5. y×y ⊂ R∪(R^c)^{-1}∪I

証明

(Zornの補題)⇒M(1) A := { y⊂x | y×y⊂R } と置けばAは有限性を持つ. ゆえにZornの補題と同値なTukeyの補題(定理1の条件5)より極大元の存在が分かる.

M(1)⇒M(2) はM(1)でRとして R∪R^{-1} を取ればよい. M(2)⇔M(3) と M(3)⇒M(4) と M(4)⇔M(5) も同様に明らか.

M(4)⇒(Zornの補題) 定理1の条件7を示せばよいが,それはM(4)の特別な場合である.

定理5

Zornの補題
⇔任意の集合x,正整数n,n項関係R⊂x^nに対し,y^n⊂Rとなる極大なy⊂xが存在する.

証明

(⇒) A := { y⊂x | y^n⊂R } が有限性を持つ事から明らか.

(←) n=2とすれば M(1) の成立が分かる.

定義

集合Xに対し,二項関係を次のように定義する.

  1. xDy ⇔ x∩y=∅
  2. xKy ⇔ x⊂yまたはy⊂x
  3. xJy ⇔ x ⊄ y かつ y ⊄ x かつ x∩y≠∅

R⊂Xを関係とする.部分集合Y⊂Xが「任意の異なる二元x, y∈Yに対しxRy」を満たすとき, Yは property R を持つと言う.

定理6

関係Rに対し N(R) で次の命題を表すとする.
任意の集合Xは property R を持つような極大部分集合Y⊂Xを含む
このとき
選択公理 ⇔ N(D) ⇔ N(D^c) ⇔ N(K) ⇔ N(J) ⇔ N(J^c)

証明

(選択公理)⇒N(J) Tukeyの補題より明らか.

N(J)⇒N(D^c) 任意の集合Xをとる.uを「任意のs, t∈Xに対し<s, u> ∉ t」を満たすように取り,s∈Xに対し s(u) := s∪{ <s, u> } と置く.仮定 N(J) を{ s(u) | s∈X } に適用すると,property J を持つ極大部分集合 S⊂{ s(u) | s∈X } の存在が分かる.Y := { s∈X | s(u)∈S } と定める.s, t∈X, s≠tとする.定義から s(u) K^c t(u) である. 故に s(u) J t(u)⇔ s(u) D^c t(u) が成り立つ.一方,s(u)∩t(u)=s∩t だからs(u) D^c t(u) ⇔ s D^c t となる. 即ち s(u) J t(u) ⇔ s D^c t,従ってY⊂Xはproperty D^c を持ち極大である.

N(D^c)⇒N(D) 任意の集合Xをとる.s∈Xに対し N_s := { {s} }∪{ {s, t} | t∈x, sDt }と置く.s, t∈X, s≠tとする.N_sD^cN_t ⇔ sDt である.よって仮定 N(D^c) を{ N_s | s∈X }に適用すれば,N(D) の成立が分かる.

N(D)⇒(選択公理) {X_λ}_{λ∈Λ}を空でない集合の族とする.X_λは互いに交わらないとしてよい.X := { {<0, v>, <1, λ>} |λ∈Λ, v∈X_λ } とする.仮定 M(D) をXに適用して,property Dを持つ極大部分集合Y⊂Xを得る.{<0, v>, <1, λ>} D {<0, w>, <1, μ>} ⇔ λ≠μだから,各λ∈Λに対し{<0, v_λ>, <1, λ>}∈Yとなるようなv_λ∈X_λが唯一つ存在する.よって f(λ) := v_λ が選択関数である.

(選択公理)⇒N(J^c) Tukeyの補題より明らか.

N(J^c)⇒N(K) 任意の集合Xをとる.∪_{s∈X}sに含まれない元uを取り,s∈Xに対し s' := s∪{u} と置く.すると任意のs, t∈Xに対し s' D^c s' となるから,s' J^c t' ⇔ s'Kt' ⇔ sKt が分かる.故に仮定 N(J^c) を{ s' | s∈X } に適用すれば,N(K) の成立が分かる.

N(K)⇒(選択公理) 明らかに N(K) ⇔ (定理1の条件3)である.

参考文献

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