2011年11月14日更新

整列可能定理について

PDF版

定理1 次の命題は同値

  1. 任意の集合は整列可能.
  2. 任意の全順序集合は整列可能.
  3. 集合 X が整列可能ならば冪集合 P(X) も整列可能.

証明 (1⇒2) 自明

(2⇒3) 「任意の順序数αに対して P(α) は整列可能」を示せばよい. P(α)に順序 < を

A<B ⇔ ∃a∈A\B(∀b∈B\A (a<b) )

で定める(ただし,a<bは順序数αの順序).この順序によってP(α)が全順序集合になることを確かめる.

(i) ¬A<A について.
A\A= ∅ なので明らか

(ii) A<B ⇒ ¬B<A について.
A<Bとすると < の定義より,あるa0∈A\Bが有って∀b∈B\A(a0<b)となる.よって明らかに¬∃b∈B\A(∀a∈A\B (b<a) ),即ち¬B<Aである.

(iii) A<B または A=B または B<A について.
(¬A<Bかつ¬B<A) ⇒ A=B を示す.A≠Bと仮定する.A\B≠∅としても一般性を失わない.<の定義より

(1) ∀a∈A\B(∃b∈B\A (b≦a) )
(2) ∀b∈B\A(∃a∈A\B (a≦b) )

である.αは整列順序集合なので a0 := min(A\B) が存在する.このa0に対し(1)から∃b0∈B\A(b0≦a0)である.このb0に対し(2)から∃a1∈A\B(a1≦ b0).a0の最小性よりa0≦a1,従ってa0≦a1≦b0≦a0となる.故にa0 = b0∈(A\B)∩(B\A) = ∅ となり矛盾.

(iv)(A<B かつ B<C) ⇒ A<C について.
¬A<Cと仮定する.A=CだとするとA<B∧B<Aとなり(ii)に反するのてA≠Bである.故に(iii)からC<Aである.A<B, B<C, C<Aより

(3) ∃a∈A\B(∀b∈B\A (a<b) )
(4) ∃b∈B\C(∀c∈C\B (b<c) )
(5) ∃c∈C\A(∀a∈A\C (c<a) )

これらを満たすa0∈A\B, b0∈B\C, c0∈C\Aを取る.a0∈A\Cである.

a0∉A\Cと仮定する.即ちa0∈Ac∪C.a0∈A\Bだったからa0∈(Ac∪C)∪(A\B)=A∪C\B⊂C\Bである.よって(4)により b0 < a0.従って(3)から b0 ∉ B\A でなければならない.すると同様の議論を繰り返して a0 < c0 < b0 < a0 が導かれ,矛盾.

同様にしてb0∈B\A, c0∈C\Bである.従って(3)(4)(5)から a0<b0<c0<a0 となり,矛盾する.

以上より(P(α), <)は全順序集合である.よって,仮定より整列可能である.

(3⇒1) Xを任意の集合とすると基礎の公理により順序数αが存在してX⊂R(α)となる.

基礎の公理とはZFに含まれる公理の1つで x≠∅ ⇒ ∃y∈x( x∩y = ∅ ) を表す.また,順序数αに対しR(α)は
R(α)の定義
と定義される.このとき「ZFから基礎の公理を除いた公理系」の元で基礎の公理と∀x∃α:順序数(x∈R(α))は同値になる.

故にR(α)が整列可能であることを示せば十分である.

α= 0 の時.R(0)=∅は明らかに整列可能である.

α=β+1 の時.R(α) = P(R(β)) で,帰納法の仮定からR(β)は整列可能,よって仮定よりR(α)も整列可能である.

αが極限順序数の時.R(α)=∪_{β<α}R(β) で,帰納法の仮定から各R(β)は整列可能である. もしα上の関数Sで
任意のβ<αに対しS(β)はR(β)の整列順序
となるようなものがあれば,R(α)は整列可能である.

R(α)上の二項関係
≦ := { <u, v>∈R(α)^2 | ρ(u)<ρ(v)∨(ρ(u)=ρ(v)∧uS(ρ(u)+1)v) } を考える.これがR(α)の整列順序関係になる事を示す.

ここでρ(u)とはu∈R(β+1)となるような最小の順序数βの事.

(i) u≦u について.
uS(ρ(u)+1)uから明らか.

(ii)(u≦v∧v≦u)⇒u=v について.
u≦v∧v≦uとするとρ(u)=ρ(v)である.即ちuS(ρ(u)+1)vかつvS(ρ(u)+1)u.S(ρ(u)+1)が反対称律を満たすのでu=vである.

(iii)(u≦v∧v≦w)⇒u≦w について.
ρ(u)<ρ(v)またはρ(v)<ρ(w)の時は明らかなのでρ(u)=ρ(v)=ρ(w)とする.この時uS(ρ(u)+1)vかつvS(ρ(u)+1)wであり,S(ρ(u)+1)の推移律よりuS(ρ(u)+1)wである.

以上より(R(α), ≦)は順序集合である.次に任意の部分集合A⊂R(α)をとる.ρ(u) (u∈ A)と表されるような最小の順序数をξとする.次にB:={u∈ A|ρ(u)=ξ}を考える.B⊂R(ξ+1)であり,S(ξ+1)はR(ξ+1)を整列するからBは最小元u0を持つ.u0の選び方から,これはAの最小元である.即ち(R(α), ≦)は整列順序集合である.

そのようなSを定義するため,まず十分大きい順序数δを取っておく.仮定によりP(δ)は整列可能なので,その整列順序rを1つとる.s(β) (β<α)を帰納法により定義する.

β= 0 の時.S(0):=∅.これは明らかにR(0)を整列する.

β=γ+1 の時.整列集合(R(γ), S(γ))と順序同型な順序数ξをとり,f: R(γ)⇒ξを順序同型写像とする.δが十分大きければξ≦δなので,fはR(γ)からδの中への順序同型とみなせる.そこでS(β)をfと(P(δ), r)から自然に導かれるR(β)の整列順序とする.

βが極限順序数の時.

S(β) := { <u, v>∈ R(β)^2 | ρ(u)<ρ(v)∨(ρ(u)=ρ(v)∧uS(ρ(u)+1)v) }

とすれば,これは整列順序になる.

この定義が上手くいくためには全てのβ<αについてOrd(R(β), S(β))<δでなければならない.その為にはδ=(sup_{β&lt;α}|R(β)|)^+とすれば良い.

定理2 整列可能定理⇔選択関数を持つ集合は整列可能

証明 ⇒は明らか. ←を示す.任意の集合Xに対し Y := { {x} | x∈X } と置けば,Yは明らかに選択関数を持つ. 故にYは整列可能.よって明らかにXも整列可能.

定理3 λは基数を表すとし,WO(X, m)で命題

ある順序数αとα上の関数fが存在して∀β<α( |f(β)| <λ ) かつ X=∪β<α f(β)

を表すことにする.mは2以上の整数を表すとするとき,次の命題は(ZF上)同値.

1. 整列可能定理
2(m). 任意の集合 X に対し WO(X, m)
3. ある m≧2 が存在して任意の集合 X に対し WO(X, m)
4. 任意の集合 X に対しある m≧2 が存在して WO(X, m)
5. 任意の集合 X に対し WO(X, aleph<sub>0</sub>)

証明 1⇔2(2) と 2(m)⇒3 と 3⇒4 と 4⇒5 は明らか.m≦n に対し 2(m)⇒2(n) も明らか.なので 5⇒1 を示せばよい.その為には選択公理と同値なAMCを示せばよい.

AMC(=the Axiom of Multiple Choice)とは次の命題のこと.

集合Xが ¬ ∅ ∈X を満たす時, X上の写像fが存在して,任意のx∈Xに対し f(x)⊂x, 0 < |f(x)| <∞ を満たす

同値性の証明はthe Axiom of Multiple Choiceを参照.

Xを集合とし, ¬ ∅ ∈X とする. 仮定5により WO(∪X, aleph<sub>0</sub>) の条件を満たす順序数αと写像 g が存在する.x∈X に対し β(x) := min{ γ< α | x∩g(γ) ≠ ∅ } と定めて f(x) := x∩g(β(x)) と置けば,この f がAMCを満たす.

基礎の公理を仮定しないと AMC⇒選択公理 は証明できない.つまりこの 5⇒1 の証明は基礎の公理を使っていることになる.実は 5⇒1 は基礎の公理を仮定しないと証明できないことが知られている.( 5⇔AMC は基礎の公理を使わずに証明できる.)一方,4⇒1 は基礎の公理を使わなくても証明できるので,その証明を書いておく.

証明 まず Y×Y⊂Y を満たす集合 Y が整列可能であることを示す.m>1 で WO(Y, m) が成立しているとする. (この時 WO(Y, m-1) であることをこれから示す.) WO(Y, m) の条件を満たす順序数αと関数 f を取り

u(β, γ, δ) := (f(β)×f(γ))∩f(δ) (β, γ, δ<α)

を考える.定義より u(β, γ, δ) は二項関係とみなせる. (即ち定義域 dom,値域 ran を考えることができる.) fの性質から

| dom(u(β, γ, δ)) |≦| f(β) |≦m
| ran(u(β, γ, δ)) |≦| f(γ) |≦m
| u(β, γ, δ) |≦| f(δ) |≦m

である.

(i)全てのβ<αに対し「f(β)≠∅⇒∃γ, δ<α(0< |dom(u(β, γ, δ))| <m)」の時.
f(β)≠ ∅ なるβ<αに対し,0<| dom(u(β, γ, δ)) |<mとなる組<γ, δ>のうち辞書式順序で最小のものを<λβ, μβ>で表す.

f(β)≠ ∅ の時 vβ := dom(u(β, λβ, μβ))
f(β)= ∅ の時 vβ := ∅
wβ := f(β)\vβ

と置き,α+α上の関数gを

β<αの時 g(β) := vβ
α≦β, β\α≅γ<αの時 g(β) := wγ

で定義する.すると∪β<α+α g(β) = y である.次に,定義から明らかに | vβ|<m, | wβ|<m だから | g(β) |≦m-1 (β<α+α)である.即ち,α+αとgが WO(Y, m-1) の条件を満たす.

(ii)あるβ≦αについて「f(β)≠∅かつ∀γ, δ<α(| dom(u(β, γ, δ)) |=0 or m)」の時.
このようなβのうち最小のものを取り,s∈f(β)とする.γ, δ<αがdom(u(β, γ, δ))≠∅を満たすとする.この時 | dom(u(β, γ, δ)) |=m である.| u(β, γ, δ) |≦m だったから,| u(β, γ, δ) |=m で,u(β, γ, δ)は関数でなければならない.さて,f(γ)≠ ∅ であるとすると Y×Y⊂Y より u(β, γ, δ)≠ ∅ となるδが存在するので,そのようなδのうち最小のものをδγと書く.

f(γ)≠ ∅ の時 vγ := { u(β, γ, δγ)(s) }
f(γ)= ∅ の時 vγ:= ∅
wγ := f(γ)\vγ

と置き,α+α上の関数gを

γ<αの時 g(γ) := vγ
α≦γ, γ\α≅λ<αの時 g(γ) := wλ

で定義する.すると(i)の場合と同様,α+αとgが WO(Y, m-1) の条件を満たす.

(i)(ii)より WO(Y, m-1) が成立する.仮定4. より WO(Y, m) が成立するmは存在するから,WO(Y, 1)が成立することが分かる.即ち,Y は整列可能である.

さて,X を任意の集合とする.この時

Z0 := X, Zn+1 := Zn ∪(Zn×Zn), Y := ∪n=0∞ Zn

と置く.すると m<n の時 Zm ⊂ Zn, Zm×Zm ⊂ Zn だから

Y×Y=∪_{m, n=0}^{∞}Z_m×Z_n⊂∪_{m, n=0}^{∞}Z_{max(m, n)}×Z_{max(m, n)}⊂∪_{m, n=0}^{∞}Z_{max(m, n)+1}⊂Y

よって先に述べた通り Y は整列可能であり,明らかに X⊂Y だから X も整列可能である.

参考文献

コメント

コメントはまだありません。

コメントする

感想、意見、質問など何でもどうぞ。
※書き込んだのに表示されない場合は、ページをリロードしてみてください。