2011年9月16日更新

線型空間について

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定理1

選択公理 ⇔ 任意の線型空間に基底が存在する

証明

(⇒)Vを任意な線型空間とする.X := { A⊂V | Aは一次独立 }とする.一次独立の定義から,Xは明らかに有限性を持つ.よってTukeyの補題によりXは極大元Bを持つ.

Tukeyの補題とは「有限性を持つ集合は(⊂についての)極大元を持つ」という選択公理と同値な命題のこと.Zornの補題についてを参照.

BがVを生成しないと仮定する.するとBの元の一次結合で表せないような元v∈ Vが存在するが,この時B⊊ B∪{ v}∈ Xとなり,Bの極大性に矛盾する.よってBはVを生成する,即ちVの基底である.

(←) 選択公理と同値な the Axiom of Multiple Choice を示す.

AMC (= the Axiom of Multiple Choice)とは次の命題のこと.
空でない集合の族{X_λ}_{λ∈Λ}に対し,空でない有限集合の族{F_λ}_{λ∈Λ}で∀λ∈Λ, F_λ⊂ X_λを満たすものが存在する.
同値性の証明はthe Axiom of Multiple Choiceを参照.

{X_λ}_{λ∈Λ}を空でない集合の族とする.X_λ∩X_μ=∅(λ≠μ)としてよい.kを体とし,X:=∪_{λ∈Λ}X_λを不定元の集合とみなして体 k(X) を考える.

単項式a=αx_1^{e_1}x_2^{e_2}…x_n^{e_n}∈k(X)に対し,I_λ(a):={i∈N|x_i∈X_λ}と置き,λ-deg(a):=Σ_{i∈I_λ(a)}e_iをλ次数と呼ぶことにする.各項のλ次数がmの多項式をm次のλ斉次多項式と呼ぶことにし,その次数もλ-degで表すことにする.f∈k(X)が
f = g/h (g, hはλ斉次多項式,λ-deg(g) = λ-deg(h)+d )
と表せるとき,fをd次のλ斉次式と呼ぶことにする.

K := { f∈k(X)|∀λ∈Λに対しfは0次のλ斉次式} はk(X)の部分体.よってk(X)はK上の線型空間とみなせる.V := <X> をXでK上生成されるk(X)の部分空間とする.仮定よりVはK上の基底をもつ.それをBと書く.

さて,λ∈Λとする.X_λ⊂Vの任意の元xは
x=Σ_{b∈B(x)}α_b(x)b
(B(x)⊂Bは有限集合,\α_b(x)∈K^×)
と一意に表される.他の元y∈X_λも同様にy=Σ_{b∈B(y)}α_b(y)bと書くと
y=(y/x)x=Σ_{b∈B(x)}(yα_b(y)/x)b
となる.表現の一意性から
B(x)=B(y), α_b(x)/x=α_b(y)/y
である.即ち,B(x)とα_b(x)/xはxによらずにλから定まる.そこでB_λ :=B(x), β_{b, λ}:=α_b(x)/xと書く. α_b(x)∈Kだからβ_{b, λ}は-1次のλ斉次式である.よって,β_{b, λ}を既約分数で表す事にすると,分母には必ずX_λの元が現れる.故に
F_λ:={x∈X_λ |∃b∈B_λ, xはβ_{b, λ}の分母に現れる}
と置けば各F_λ⊂ X_λは空でない有限部分集合である.よって the Axiom of Multiple Choice が成立する.

体kと集合Xに対し,k^(X)でXを基底とするk-線型空間を表す.

定理2

kを体とするとき
選択公理
⇔ 任意のk-線型空間Vとその部分空間Aに対し,Aの補空間Bが存在する.
(即ち,A⊕B = V となるB.)

証明

(⇒) X := { W⊂V: 部分空間 | A∩W=0 } にZornの補題を適用すればよい.

(←)AMCを示す.{X_λ}_{λ∈Λ}を空でない集合の族とする.各X_λは互いに交わらないとしてよい.X:=∪_{λ∈Λ}X_λとする.各λ∈Λに対し
A_λ:={Σ_{x∈X_λ}a(x)x∈k^(X_λ) | Σ_{x∈X_λ}a(x)=0 }
と定義する.A:=⊕_{λ∈Λ}A_λ⊂⊕_{λ∈Λ}k^(X_λ)=k^(X)に仮定を適用するとA⊕B=k^(X)となる部分空間B⊂k^(X)が存在する.

x∈X_λをx∈k^(X)とみなして x=a(x)+b(x) (a(x)∈A, b(x)∈B) と表す.任意のx, y∈X_λをとる.x-y∈Aに注意すると
b(x)-b(y) = (x-a(x))-(y-a(y)) = (x-y)-a(x)+a(y)∈A
となるからb(x)-b(y)∈A∩B=0,即ち b(x)=b(y) である.従って,b_λ := b(x) は x∈X_λの取り方によらずλのみから定まる.b_λ∈B⊂k^(X)なので,b_λ=Σ_{y∈X}α(λ, y)yと一意に表せる.そこで F_λ := {y∈X_λ|α(λ, y)≠0} と置く.Σ_{y∈X}α(λ, y)y は実質有限和だからF_λも有限集合である.また,x∈X_λに対し
x-Σ_{y∈X}α(λ, y)y = x-b_λ = x-b(x) = a(x)∈A = ⊕_{λ∈Λ}A_λ
であるが,x-Σ_{y∈X}α(λ, y)yのA_λ成分は明らかにx-Σ_{y∈X_λ}α(λ, y)y.A_λの定義より1-Σ_{y∈X_λ}α(λ, y)=0,故にα(λ, y)≠0となるy∈X_λは存在する.即ちF_λは空でない.よってAMCが成立する.

定理3

選択公理 ⇔ Q-線型空間の生成系は基底を含む.

証明

(⇒)省略.

(←)AMCを示す.{X_λ}_{λ∈Λ}を空でない集合の族とする.各X_λは3つ以上元を持つとしても一般性を失わない.各λ∈Λに対しQ-線型空間V_λを
V_λ := { f: X_λ→Q | ある有限集合F⊂X_λがあってfはX_λ\F上定数関数 }
と定義する.G_λ := { f∈V_λ| fは定数関数ではないが一点を除くと定数関数 }と置けばG_λはV_λを生成する.

V := ⊕_{λ∈Λ}V_λとする.自然な埋め込みi_λ: V_λ→ Vが存在する.G:=∪_{λ∈Λ}i_λ(G_λ)と置けば G は V を生成する.そこで仮定より V の基底 B⊂G が存在する.B_λ := { x∈V_λ| i_λ(x)∈G }とすれば B_λ⊂G_λがV_λの基底である.

定数関数 1∈V_λを基底 B_λの元 b_i の一次結合で表す: 1=α_1b_1+… +α_nb_n.b_i∈G_λで,X_λは3つ以上の元を持つから,b_i: X_λ→Q が X_λ\{x_i} 上定数関数になるような x_i が唯一つ存在する.そこで F_λ := {x_1, …, x_n} とすればよい.

定義

Rを環とし,MをR-加群とする.

Mが入射的(injective)
⇔ R-加群の任意の単射準同型 f: L→N と任意の準同型 g: L→M に対し 準同型 h: N→M が存在して g=hf となる.

Mが射影的(projective)
⇔ R-加群の任意の全射準同型 f: N→L と任意の準同型 g: M→L に対し 準同型 h: M→N が存在して g=fh となる.

定理4

kを体とするとき,次の命題は同値

  1. 選択公理
  2. k-線型空間は入射的
  3. k-線型空間は射影的
  4. 基底を持つk-線型空間は射影的

証明

(1 ⇒ 2) k-線型空間 V が入射的であることを示す.任意の単射線型写像 f: U→W と任意の線型写像 g: U→V を取る.

fによりU⊂Wを部分空間とみなし,定理2 を使うと W=U⊕U' と書ける.そこで h: W→V を合成 W=U⊕U'→U→Vで定めればよい.

(2 ⇒ 1)定理2 の条件(補空間の存在)を示す.V をk-線型空間とし A⊂V を部分空間とする.仮定2. よりAは単射的である.故に,次の図式を可換にする線型写像 f: V→A を得る.
B := ker fとすれば A⊕B = V.

(1 ⇒ 3) k-線型空間 V が射影的であることを示す.任意の全射線型写像
f: U→W と任意の線型写像 g: V→W を取る.

Vの基底{e_i}を取る.(選択公理を仮定しているのでこれは可能.)fが全射であることから,各e_iに対しf^{-1}(g(e_i))≠∅である.よって選択公理によりu_i∈f^{-1}(g(e_i))を取ってくることができる.h(e_i):=u_iで線型写像 h: V→U を定義すれば,これはg=fhを満たす.

(3 ⇒ 4)は自明.

(4 ⇒ 1)AMCを示す.{X_λ}_{λ∈Λ}を空でない集合の族とする.各X_λは互いに交わらないとしてよい.X:=∪_{λ∈Λ}X_λと置く.f: X→Λを f(x) := (x∈X_λとなるλ) で定める.f から線型写像 \bar(f): k^(X)→ k^(Λ) が自然に得られる.f が全射だから,\bar(f) も全射である.仮定4. より,k^(Λ)は射影的,よって次の図式を可換にする線型写像 g: k^(Λ)→k^(X) が存在する.

λ∈Λに対し g(λ)=Σ_{x∈X}a(x, λ)x と一意に表す.この表示を使って
F_λ := { x∈X_λ| a(x, λ)≠0 }
と置く.Σ_{x∈X}a(x, λ)x は有限和だから F_λも有限集合である.また
λ= Id_{k^(Λ)}(λ) = f'(g(λ)) = f'(Σ_{x∈X}a(x, λ)x) = Σ_{x∈ X}a(x, λ)f'(x)= Σ_{λ∈Λ}b(λ)λ ( b(λ) := Σ_{x∈X_λ}a(x, λ) )
となるから,表現の一意性より a(x, λ)≠0 となる x∈X_λは存在する.即ちF_λ≠∅.故にAMCが成り立つ.

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